mimiriのブログ~要領悪くても終わればいいさ~

アラフォーで子ども2人出産し、日々の思うことを書いてます

そこそこフリーにはたらきたい

「フリーにはたらく」

なんていい響きだろう。

 

私が働く会社は古い体質の組織で、コロナの影響でなんとか在宅勤務はできるようになったものの、会社のPCは持ち出せない。リモートワークで会社のシステムや共有ファイルにアクセスするためにはAnydeskという「会社PCの電源を誰かに入れてもらって、自宅のPCから会社PCにアクセスする」ソフトを使っている。

つまり「誰か絶対出社しないリモートワークできない」ので、フリーなようでフリーでない。

 

勤務時間はきっかりと決められていてフレックス制度もなく、座席も固定。ペーペーの一般社員には業務上の裁量がなく、何をするにも上司にお伺いを立てる。

「自由な発想で業務に取り組もう」と社長は口では言っているが、事を決定する「エラい人たち」が自由な発想に対して「いや、それはちょっと時期尚早じゃないかね」とつぶしてきたり、「なんだかよくわからないな」と責任取って決定してくれることはないし、異端児扱いしてくる人もいるので全然フリーに発言できない。

そうして決められた年齢になって退職し、抜けた穴には結局、長いものに巻かれて「エラい人たち」に取り入るのがうまい人が「次のエラい人」になっていく。

 

役職についている「エラい人」を「さん付け」で呼ぼうものなら「○○さんは課長だよ」などと周りの人に苦言を呈される。そんな風土で何年も働いているので、私も派遣社員さんや後輩が配属になると、初日の段階で電話の操作方法とともに「役職についている人の調べ方」をレクチャーするのは「センパイとしての親切心」であり、人の名前と顔と役職を覚えるのは「仕事の初歩」だと思っていた。

 

しかし、同期が次々に昇進して課長だの所長だのになっていくと、出世欲はないけれど「え、アイツがオサ?」というモヤッと感が出てくる。

考えてみれば、直属の上司は稟議をあげる上で「どっちが課長でどっちが部長なのかわかりません」というわけにはいかないけど、他部署の人の役職はほとんどどうでもいい。「さん」で充分だし、なんなら現役のスポーツ選手のように、戦う一員として「○○選手」のほうがいいんじゃん、という気さえする。

 

そんなこんなで会社員として働いてきたが、母になり、会社を何ヶ月も休んで家事と育児しかやらない日々を経験した。

会社員を休んでみて、家事も育児も「はたらく」だな、としみじみ思った。むしろ、会社に行っているだけのほうが断然ラクだ。

 

目を離したら、ミルクが足りなかったら、死んでしまうかもしれない小さい命を預かる24時間。

夜中に何度も授乳で起きてへろへろになっても、深夜残業手当はでない。

自分で情報を取りに行かない限り誰も教えてくれず、わからないことだらけの毎日。

だけど情報を取りに行こうとすると「発育のためにあれこれしてあげましょう」というたくさんの情報の波に飲まれて、おぼれそうになる感覚。

「それくらい母としてやるのは当たり前」という目に見えないプレッシャー。

 

長いものに巻かれていたら、誰かが決めてくれて、責任も取らなくていい。

だけど子育てに関することは一つ一つが選択と決定の連続で、「みんながやっていること」が正しいとは限らないし、自分の子に合っているとも限らず、親として自分で決めないといけない。

 

完全に自由でフリーな状態って何だろう。

会社であれば、労働時間が自由に選べる。これは働きやすそうだ。でも自分でコントロールする必要はある。

会社での席が自由に選べる。これは気の合わない同僚と顔を合わせなくて済んでいい。でも職場の人の顔と名前は覚えられないのはちょっと困る。タイミングを見て上司に相談するのも難しい。

業務上の裁量があるのも、どんどん仕事を進められるのはいいけど責任も伴う。

 

そういえば、私の父は自営業だ。

フリーランスとはちょっと違うが、コンスタントに収入が入るわけではなく、有給休暇もなかった。土曜日も仕事をしていて、学校行事に参加してくれたことは一度もなかったし、夏休みにどこかに旅行に連れて行ってくれたこともなかった。休めばその分仕事は減るので、子どもの体調が悪いとうつされないかとヒヤヒヤしただろう。

それでも、私が小さかった頃、熱を出せば付き添って寝てくれた。日曜日しか仕事の休みはないのに、よく一緒に遊んでくれた。

 

家事と育児からフリーになるってどういうことだろう。

母親ってぜんぜんフリーじゃない。特に小さい子どもがいる母親は、一人でどこかに行くことすらほとんどままならない。

だけど、24時間全面的にフリーになったときは子どもが完全に私を必要としなくなったときで、夫からも完全にフリーになるときは夫がこの世からいなくなったときだな、と考えるとちょっと寂しくなってきた。

 

会社も家事も育児も「そこそこフリーにはたらく」くらいが一番幸せなことなのかもしれない。