mimiriのブログ~要領悪くても終わればいいさ~

アラフォーで子ども2人出産し、日々の思うことを書いてます

【読書ノート】あちらにいる鬼

小説を読むことは、いつでも私にとっては現実逃避。なんだけど、この小説は感情移入が忙しかった。

 

井上荒野という作家を知らなかった。直木賞作家なのでどこかで名前くらい聞いたことがあってもおかしくないのに、知らなかった。

瀬戸内寂聴が亡くなったニュースで、井上荒野を知った。自分の父と、母と、父の愛人であった瀬戸内寂聴を描いた小説。その紹介で知った。2019年に出版された本だった。よぅそんな題材書くなぁ。完全に興味本位で図書館で予約したものが、瀬戸内寂聴が亡くなってから4ヶ月後に手元にようやく来たので読んだ。いつもおそろしく待たされる眼科で、黙々と読んだらあっという間に読み終わった。表紙が裸婦像なので、近くにいたおじいちゃんにチラチラ見られたけど、ありがたいことに眼科の待ち時間が苦ではないくらいあっという間に読んだ。しかし、頭のなかでいろんな登場人物に自分が重なってしまって、ひどく疲れた。

 

瀬戸内寂聴は、私が物心ついたときから瀬戸内晴美ではなくて瀬戸内寂聴だった。源氏物語の現代語訳を書いた人、という程度の認識だった。なにかの雑誌に載っていたエッセイ、恋愛相談的なやつは読んだことがあった。恋多き人生で、50歳くらいのときに出家した人。それは知っていた。

 

瀬戸内寂聴に小さな娘がいたことは知らなかった。愛した男と生活するために、夫と子どもを捨てて、家を出たこと。私ももしかしたら20代で結婚していたらそうだったかもしれない。ヒヤリとした。

 

小説の中の長内寂光の恋人、白木篤郎として描かれている人物が、井上荒野の父。女たらしのこのオトコが、夫と重なる。血を見るのが怖いくせに、産婦人科の医者になればよかった!助産師は女性しかなれないから、職場はオンナだらけで天国だということを高校生のときに知りたかった!とかなり本気めいて言っている夫に。女子大の先生に今からでもなれないかなぁー、と、これまたかなり本気めいて言っている夫に。

あるいは、職場内でダブル不倫していると言っていた同級生のオトコとも重なる。

飲み会の空気を全部持って行ってしまう会話上手なところが、若い彼女を持ちながらなかなか結婚せずにいる同級生のオトコとも重なるし、若かりし頃、私を散々口説いてきた妻子ある会社の先輩とも重なる。

 

白木に夫を重ねてしまうから、白木の妻の笙子に自分を重ねてしまう。こんなにデキた妻にはなれないのだけれど。

 

白木の第二子、焔と自分も重ねてしまう。6歳年上の姉がいることと、陶芸家を目指して瀬戸に行ってしまうところ。そういえば、なかなか就職先が決まらなかった大学生のころ、伝統工芸士に弟子入りする道も考えたな。結局、父に反対されてそうしなかったけど。いや、父は単純に生活の心配をしてくれていただけで、本気でやりたいと思う自分がそこにいなかっただけだったんだと思う。そんなことを思い出した。

 

唯一、自分が重ならなかったのは、井上荒野の立ち位置である海里だけだった。

 

登場人物に自分を重ねてしまって、あっという間に読み終わった、というのは、結局、私もなんだかんだと永遠の5歳児のような夫との生活を楽しんでいるからなのかもしれない。

 

事実は小説より奇なり。そんな生活をどうせなら楽しんで生きてやるかー。という気になった。