mimiriのブログ~要領悪くても終わればいいさ~

アラフォーで子ども2人出産し、日々の思うことを書いてます

【読書ノート】ライオンのおやつ

図書館でかれこれ2年以上待った。1,000人以上待っていた状態で夫が予約していた。気長に待つか~、と生まれたばかりの子どもの図書館カードで予約していた。あれから、もう2年半。まるでタイムカプセルを開けるかのような錯覚。

 

どんな話なのか、全く知らなかった。夫も全く知らないで、本屋大賞で2位だったし、小川糸だし、と予約していたらしい。先に読み終わった夫が「いい話だったから読んでみて」と言ってきたので、連休中に天気が良くないのを言い訳にでかけもせず、子どもにパズルやらシールやら渡して、スキあらばと読んだらあっという間に読めた。

 

ホスピスの話なんだけど、と夫が言っていたので、号泣する用意はできてます!と読んでいたが、案外ティッシュの出番は少なかった。期待しすぎていたのかもしれない。2日前に読んだ『クジュラの奇跡』のほうが思いがけず泣けた。ただ、いい話だとは思った。

 

”端から端までクリームがぎっしり詰まったチョココロネみたいに、ちゃんと最後まで生きることが目標”ー主人公・雫の言葉が妙に心に残った。そんなチョココロネみたいな人生じゃないな、いまのところ私の人生。ただ、毎日を生きているだけの人生。とりあえずクリームは入ってますけど、と言えるかどうかもあやしい。

 

33歳、独身女性。末期がん。瀬戸内海のレモン島にあるホスピスで最後の時を過ごすと決めた雫。少し境遇は違うけれど、先日乳がんでステージ4とFacebookに投稿していた友人のことをどうしても考えてしまう。本の内容が内容なだけに、それほどまでには親しくない彼女に「読んだことある?」とは聞けない。

 

私は、あと何年生きることができるだろう。

夫の母親は40代半ばで亡くなった。ガンだったらしい。見つかったときにはもう手遅れだったのだという。夫はもう高校を卒業していたけれど、高齢出産の私においては、お母さんの亡くなったタイミングはまだ子どもが小学生になってない。到底、死ねない。

 

雫がホスピスでかわいがっている犬の描写と、子どもたちの姿が重なる。フワフワの髪の毛。モニモニと揉むと気持ちよさそうに笑う顔。スヤスヤ隣で眠る寝息。「ママー!!」とドタドタ走り寄ってくる姿。死ねない死ねない。子どもが特別欲しかったわけでもないし、子どもがとても好き、というわけではないし、すっごくかわいいと思っているわけでもないけど、死ねない死ねない。

 

ライオンの家、というのがホスピスの名前で、そこで出される「日曜日のおやつ」が実にドラマチック。思い出のおやつをリクエストできる制度で、忠実に再現してもらえるように細かく味や見た目もリクエストで書くことになっている。

 

私にとって、最後に食べたいおやつは何だろう。

子どもの頃よく食べたおやつは、チョコパイだった。もちろん市販のものである。いや、でもあれをリクエストするほどではないな。

とするとやっぱりあれかな、と思う。母がよく作っているパウンドケーキ。レーズンがたくさん入っていて、あんまりお酒はきいていなくて。子どもの頃はちょっとパサついているのがイヤで、あんまり食べなかったんだけど。でも一緒に作るのは楽しかった。バターと卵と砂糖を電動ミキサーで混ぜて、ミキシングにくっついたそのクリームを指ですくってなめるのが好きだった。とてもとてもお行儀のよろしくないその行為を、母は笑いながら許してくれた。許すどころか「手伝ってくれたご褒美」くらいに言ってくれたような気がする。あのクリームがとにかくおいしかった。お砂糖がちょっとざらっとするところも。卵黄が微妙にミキシングの上のほうに飛んで固まっているのも。

 

あのパウンドケーキ、今度ちゃんとレシピもらおう。

幸いにも、まだ母は生きてる。そして、まだあのパウンドケーキ、年に何回か作っているらしい。私の最後のおやつどころか、母が死んだら永久に食べられないのは困る。

 

そうなると、あれだな。子どもにとって「手作りのおやつ」っていうのはけっこう大事なんだな。

子どもたちのおやつは全然作ったことがなく、市販のクッキーに頼り切りの私。ドキリとした。まぁでも私が作らなくても。たまに夫がホットケーキ焼いてくれてるし。お菓子担当は夫にお願いしよう。

 

人生の最後をどこで過ごすか。瀬戸内海の海を見ながら、何に食べられてしまうでもなくおびえることのない百獣の王・ライオンのように、何も恐れず死を迎えられる「ライオンの家」が本当にあったらいいな、と思う。調べてないけど。

 

小川糸だし、ひょっとして映画化かドラマ化されたか?と思ったら半年前にNHKでやっていたのね。最近全然ドラマを見れないので、全くチェックしてなかったけど、読む前に見なくて正解だった。キャストが私のイメージと違いすぎる。マドンナ役が鈴木京香というのは全然しっくりこない。吉永小百合って感じでもないけど、年齢的に鈴木京香では若すぎる。

小説はやはり、映像化される前に読むに限るし、そもそも安易に映像化していただくのはちょっとどうかと思ってしまう。

 

第1子が生まれたタイミングで予約した本だったが、今ではもう一人子どもがいる。子どもを持つと本の感想も変わってくるし、気づきも変わる。

予約の本が届くタイミングは、占いめいていておもしろい。案外、必要なときにやってくるものなのかもしれない。