母は女優になった気分で
イマイチ実感はないが、母の日に何かを贈る側だけでなく、贈られる側にもなった。去年までは夫がケーキを買ってきて、「それ、自分が食べたいだけやん」というテイストだったが、今年は2歳半を過ぎた第1子が夫と散歩に行ったついでに花を買って帰ってきた。
「お母さん、どれが好きだと思う?」と夫が聞くと、「あか!」と言ったのだそうだ。しかしそれはキミが好きな色だ。
そう。私は赤い花が好きではない。
というか、そもそももらいものとしての花そのものにときめかない。
花瓶をわざわざ出さないといかん。
日々、花の水を取り替えるのも、私。
1日の中で仕事が増えるだけだろ、と思ってしまう。心がすさんでいる人間の考えることなのかもしれない。
そんなことを2歳児にいうわけにもいかないので、「わぁ!うれしい!ありがとう!」と言うしかない。作り笑いだけど、まだそこらへんの演技はバレない。家の中でもマスクをしたい。そうすればもっとバレなくて済むだろう。
保育園の先生たちは笑顔がうまい。テンションも高く、大げさなくらい子どもに接している。
すまんね、子どもたちよ。私はそういうタイプの人間じゃないのだよ。
「子どもたちが寝ている間にゆっくり買い物しておいで」と言ってもらったので、久しぶりに子なしで近くのスーパーに行った。
ゆっくり買い物、がデパートで洋服を買うのではなく、近所のスーパー。重い荷物を持ちながら、「いや待て、これなら夫に行ってもらってもよかったのでは」と頭をよぎったが、2種類ある子ども用の買い物カゴを「こっちがいい」「あ、やっぱりこっちがよかった」と言われたり、「カートに乗りたい」と言ったかと思えば「やっぱり降りる」と言われたりで、入口から数メートルの地点でもめるヤカラもいないし、自分の食べたい具材をゆっくり選べる買い物はやはり天国だった。
8分の1にカットされたスイカが割引になっていたので、迷わず買った。帰宅すると子どもが昼寝から起きていて、私の自由時間はあっけなく終了。
ガッカリ感を隠して「スイカ買ってきたよー!!」と明るく振る舞った。
母は女優にならねばならん、と思い知らされた母の日だった。